増資によって生じる課税や増税の問題

税理士 兵頭始 著者:兵頭始税理士事務所 税理士 兵頭始
①増資新株を誰に何株割り当てるかによって、株主に対して贈与税や所得税が課税されることがあります。

増資前の株主に対して、増資前の持ち株数に応じて新株を割り当てる場合には、新株の発行価格をいくらにしても問題はありません。また、総数で何株発行しても構いません。

しかし、増資前の株主以外の人や会社に増資新株を割り当てる場合や、増資前の株主に割り当てるが、増資前の持ち株割合とは違った割り当て方をする場合には、会社法の手続きは適正に踏んでいても、税務上は株主間で贈与があったものとみなされ贈与税または所得税が課税されることがあります。

増資に伴って課税されることを避けるためには、事前に株式の評価を適正に行うことと、その評価に基づいて誰に何株を割り当てるかを検討することが必要です。

②資本金額の違いにより税額や税金の計算方法が違ってきます。

資本金が多くなると税務上は不利になります。
資本金が多くなると増資前と同じ利益でも税金は増えることがあります。

イ.地方税の均等割り
1千万円、1億円、10億円…の順に多くなります。

ロ.交際費の非課税枠
5千万円(現在は特例で1億円)を超えると、交際費は税務上はまったく費用となりません。

ハ.資本金が1億円を超えると中小法人に対する様々な優遇税制が受けられなくなります。
(税法では「資本金が1億円以下の会社」を中小企業としています)
代表的なものは、課税所得800万円以下の部分に対する軽減税率15%です。
⇒資本金が1億円を超えると、通常税率の30%で課税されます。

ニ.資本金が1億円を超えると、事業税に外形標準課税が適用され、赤字の年度でも税額が算出されることが多くなります。